「きのくに子どもの村学園」との出会い

日本映画批評家大賞 ドキュメンタリー部門 大賞『夢みる小学校』で、監督のオオタヴィンさんが1年間密着した「きのくに子どもの村学園」。

自由な学校として有名でありながら、学習指導要領に準じたカリキュラムで自治体から認可された学校。30年以上も私立として運営し、全国から見学や自分達の地域にも学校を作ってほしいとオファーが絶えない奇跡のような学校です。

「北九州子どもの村小中学校」に夫の同級生が働いていることを聞き、何やら面白そうな学校だと資料を取り寄せ、概要を知っただけで感動した私は、北九州まで見学に行っちゃったんですね〜。夫婦二人で。
まだ長男も産まれていない時でした。
でも、実際に見学した日に「いつか子どもが生まれたら、この学校に通わせたい!」と思ったのでした。

そんな「きのくに子どもの村学園」について、私の主観も含めてご紹介したいと思います!

 

A.S.Neilの教え

まずは子どもを幸せによう。すべてはそのあとに続く。
by A.S.Neil

こんな素敵な言葉がホームページの冒頭を飾る学校、

それが『学校法人きのくに子どもの村学園』です。

「世界一自由な学校」と称されるイギリスのサマーヒルを創設した教育家ニイル。そのニイルの思想に共感し、自由な学校を目指して設立されたのが「きのくに子どもの村学園」(以下、きのくに)。

ニイルがサマーヒルで行っていた

  • 授業に出る出ない が自由
  • 子どもも大人も同じ一票の全校集会
  • ファーストネームで呼び合う人間関係

この取り組みを、きのくにでも行っています。

 

「学校」の概念を覆す学校

きのくにのことを知れば知るほど、私が子どものとき通いたかった!と心底思います。

魅力はいろいろとあるのですが、HPの記載が分かりやすいのでまずは紹介がてら引用します。

1学年15名の小さな学校です。宿題がない。テストもない。「先生」と呼ばれる大人もいない。大人は「〇〇さん」とか、ニックネームで「ゴンちゃん」などと呼ばれます。
子どもは自分のしたい活動をよく考えて、その年のクラスを選びます。授業の多くが体験学習に当てられ、どのクラスも異年齢学級です。

山の中の学校なのに、マイクロバスなどを使ってどんどん見学や旅行に出かけます。修学旅行や海外研修にしても、4泊5日〜1ヶ月も出かけます。なんと2ヶ月もスコットランド(キルクハニティ子どもの村)に滞在するグループもあります(費用は格安)。たぶん日本でいちばん日本と世界に目を向けた学校といえるでしょう。
少し大げさにいえば、日本でいちばん楽しい学校。それがきのくに子どもの村学園です。

 

3つの原則

きのくにでは、基本方針として3つの原則があります。

自己決定の原則

子どもたちがいろいろなことを決めます。

自分が入るクラスは1年の初めに、一人一人がそれぞれの興味関心に基づいて決めています。

そのクラスで何をするか、どんな手順でするか、何が必要で何を買うか、なども話し合いで決めます。

公立学校でよく耳にするブラック校則なんてものも当然ありません。

学校全体やクラスに必要なルールは、集会で話し合い子どもたち自身が決めているからです。

個性化の原則

一人一人の興味や違いが大事にされます。

きのくにのカリキュラムは、大きくプロジェクトに分かれる縦割りのクラスで編成されていますが、一人ひとりの得意・不得意、理解度などが違うまま1〜6年生までが同じ活動に取り組んだり、個々の進度や習熟度に合わせて基礎学習も行なったりしています。

ただ、学園長の堀さんは「個別化」と「個性化」は別物であると言っています。学習のペースだけ個人に合わせるというやり方ではなく、教材や活動を工夫しながらグループ学習も取り入れることが一人ひとりの学習や成長を促すのだそうです。

個性化教育とは、一人ひとりの子どもが自分自身になるのを援助する教育である。つまり感情面でも、知的にも、そして人間関係の面でも自由な子どもを目標とする。

自由学校の設計』より

体験学習の原則

直接体験や実際生活が学習の中心になっています。

単なる「モノづくり」の活動ではなく、また「ままごと」的になってもいけない。「ホンモノ」の活動がこの学校の中核になっており、プロジェクトを通して子どもたちは知識や技術を自然と身につけていくのです。

体験学習は、生活に根ざし、子どもたちの知的欲求に基づいたあらゆる学習の出発点だと堀さんは言っています。「教師主導の総合学習」とも違い、子どもの自己決定や個性と一体化した体験学習をきのくには目指しているのだそうです。

戦後初めての学校法人

戦後初めての学校法人として認可された和歌山県を皮切りに、現在5つの小中学校と1つの高等専修学校を運営しています。

きのくに子どもの村小中学校(和歌山県)
かつやま子どもの村小中学校(福井県)
南アルプス子どもの村小中学校(山梨県)
北九州子どもの村小中学校(福岡県)
ながさき東そのぎ子どもの村小中学校(長崎県)
きのくに国際高等専修学校(和歌山県)

私立学校法や学校の設置基準など、ハードルの高い正規の私立学校にこだわったのには理由がある、と堀さんは言っています。

まず一つに、公的補助があること。助成がなければ、保護者の負担、教師の犠牲、教育環境が悪くなることが予想され存続が危うくなる。二つ目に、不登校の駆け込み寺としてではなく独自の教育観を持った保護者や子どもによって選ばれる私立校になることで、現在の公教育に一石を投じることができるから。

 

 

 

こんな自由な学校が30年以上も前からあったなんて。。

 

学園長の堀さんは数多くの著書も出しています。
学校設立までの苦労、ニイル、デューイ、エッケンヘンド・・過去の教育家から何を学んでどのように学園の理念や基本方針を作り上げてきたかがよく分かり、また親である私たちでさえも見失っている「子どもがもつ力」についてもたくさんの気づきがあります。

興味のある方はぜひ読んでみてください。
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