お子さんのスマホ利用について、頭を悩ませていませんか?
現代の子どもたちにとってスマホは当たり前の道具ですが、ゲームやSNSばかりで集中力が続かなくなったり、人間関係でトラブルになったり…と、親としては心配が尽きないものです。
現代の子どもたちにとってスマホは当たり前の道具ですが、ゲームやSNSばかりで集中力が続かなくなったり、人間関係でトラブルになったり…と、親としては心配が尽きないものです。
アメリカのポートランドの公立学校で精神医療従事者として働くキャロン・モースさんも、同じように悩んでいました。彼女は学校で子どもの心の健康をサポートする仕事をしていて、スマホやSNSが子どもの集中力を短くしたり、新しい不安を生み出したりするのをたくさん見てきたので、スマホには強く反対していました。
そんな彼女の9歳の娘さんが「スマホが欲しい!」と言ったとき、モースさんはきっぱりと「絶対にダメ!」と答えました。しかし同時に、モースさんは子どもたちに「自分で友達に電話をかけたり、遊びの約束をしたり、おじいちゃんおばあちゃんと話したりする」自立の機会を与えたいとも思っていました。そして何より、彼女自身が、子どもたち同士の相談の間に入って、いつも「連絡係」になるのに疲れていたのです。
目次
娘さんの10歳の誕生日に贈られた、意外なプレゼントとは?
そこでモースさんが10歳になった娘さんにプレゼントしたのは、なんと固定電話でした!
その固定電話を役立ててもらおうと、モースさんはある仕掛けを考えます。娘さんが友達の親のスマホにばかり電話をかけるようになったら困りますよね。だから彼女は、近所の友人にこの計画を話し、みんなも固定電話を置いてみないかと提案しました。すると、何軒かの家がすぐに「いいね!」と賛成してくれました。スマホを欲しがる自分たちの子どもにも良いチャンスだと思ったのです。モースさんはその後も、娘さんが電話機のコードを指に絡ませながらお友達と話している写真を見せて、「見て! とっても可愛いいでしょ!うまくいってるし、とても大切なことよ!」と、周りの大人たちに呼びかけ続けました。
この呼びかけが実を結び、今ではサウスポートランドの近所でおよそ15〜20の家族が固定電話を置いています。こうして、子どもたちが親のスマホを借りなくても、自分で友達に簡単に電話できる「昔ながらのつながりの輪(レトロなバブル)」が作られたのです。親たちは、しばらくの間、スマホにまつわる不安や心配から解放されて安心しています。
ここ数年、スマホに代わる昔ながらの技術への関心が高まっています。子どもに“ガラケー”を与えたり、リビングにデスクトップパソコンや古いゲーム機を置いたりする親もいます。あるお母さんが固定電話の話をSNSに投稿したところ、たくさんの親が「うちもそうしたよ」「これからする予定だよ」とコメントしたほどです。
なぜ、「みんなで協力する」ことが重要だったのか?
「自分の子どもだけスマホを持っていなくて仲間外れになったらどうしよう…」多くの親がこう心配しますよね。みんながスマホを持っている中で、自分だけ「ダメ」と言うのは難しいからです。これは「社会的ジレンマ(みんなで協力しないと難しい問題)」と呼ばれています。
でも、今回のサウスポートランドの事例は、この問題を解決するヒントをくれました。スマホやSNSが子どもの不安やうつ病と関係があるという研究がある中で、この取り組みをきっかけにした本『The Anxious Generation』の著者であるジョナサン・ハイトさんは言います。「もし親たちがグループで協力してやれば、実はもっと現実の世界でのつながりを育める」と話しています。
まさに、サウスポートランドの親たちはこのことを実感しています。モースさんの娘さんの固定電話はピンク色でコードが付いており、リビングの誰もが使える場所に置いてあります。そうすることで子どもたちに、親に聞かれてもいいようなオープンな会話をしてもらい、かつ、おもちゃなどで遊びながらではなくて、電話の相手との会話に集中できるようにしていると説明しています。
固定電話が親と子にもたらす、驚きのメリット!
では、固定電話が子どもたちにもたらす、意外なメリットを見ていきましょう。
コミュニケーション能力がぐんと伸びる!
固定電話は、声だけで話しますよね。このシンプルな機能が、子どもたちのコミュニケーション能力をとても高めていることがわかりました。
- しっかり聞く力、話す力:モースさんの娘さんの学校に通うエリン・マスターソンさんの息子さんも、最初は「もしもし、いるー?!」と大きな声で叫んだそうです。でも数か月後には大きく変わりました。固定電話での会話は、相手の顔が見えたり、面白いフィルターや絵文字があったりはしません。だから、子どもたちは相手が何を言っているかに“本当に集中する”ようになるんです。
- 相手の気持ちを考える会話:マスターソンさんは、息子さんたちが「人の話をじっくり聞いている」と感じているといいます。また、別の親であるミンディ・ハルさんも、8歳の娘さんが固定電話を使い始めてから「会話で相手をうまく引き込めるようになった」と言っていて、しかも「相手の話をよく聞いていて、言葉の細かいニュアンスから意味をよく理解するようになっている」と驚いています。
自分でできることが増え、現実の世界での交流が深まる!
固定電話は、子どもが自分でできることを増やし、現実の世界での友達とのつながりを強くする道具にもなっています。
- 自分で遊びの約束ができる:固定電話を使うようになってから、子どもたちは自分たちで友達と遊びの約束をするようになりました(もちろん、最後は親に許可をもらいます)。
- 親を通さずに友達と話せる:直接会えない日でも、子どもたちは固定電話を使って友達と話しています。子どもが友達にゲームの質問をしたり、学校を休んだ友達の様子を聞いたり、雨の日にただおしゃべりしたりしている姿を見守っている親たちは、子どもが電話で“何か望ましくないこと”をしていないか心配する必要がありません。
- 親が子どもの友達との会話を知ることができる:親にとっては、子どもたちの友達同士の交流を少し知ることができる、貴重な機会にもなっています。ハルさんは、娘さんが友達と1時間半も電話で「キャーキャー笑いながら話していた」ことにびっくりしたそうです。
スマホに「ハマる」のを防ぎ、自分のスマホを持つ準備ができる!
心理学者のジャクリーン・ネシさんは、親はただスマホを「禁止する」だけでなく、子どもに別の方法を与えることが大切だと話しています。固定電話は、その良い方法になり得ます。
- まだ発達段階の脳を守る:ほとんどの親は、いつか子どもにスマホを持たせるだろうと考えていますが、できるだけその時期を遅らせたいと思っています。固定電話を使うことで、専門家が言う「子どもの脳が特にスマホにハマりやすい」時期を過ぎてから、心がもっと成長した状態でスマホを使い始めることが可能になるでしょう。
- 話す習慣を身につける:固定電話で身につけたコミュニケーションの力は、スマホを持つようになった後も役に立つはずです。会話によるコミュニケーションの練習を積み重ねることで、子どもたちは文字を送ったり、SNSに書き込んだりするよりも、誰かに電話して直接話すという方法を選ぶようになるかもしれません。そうすれば、人との関係がもっと強くなる可能性があります。
固定電話のちょっとした課題と、これからのこと
もちろん、固定電話にも完璧ではない点があります。映画を見ている時に電話が鳴ると邪魔になったり、スマホのように簡単に音を消せなかったりします。たまに「ブーン」と変な音がすることもあるそうです。その時は、娘さんたちは思い切り「バン!」と電話機を叩いて音を止めることを覚えたとか。笑
現在、モースさんやほかの親たちは、上の子が中学生になって、もっと色々な場所に行くようになったらどうするか考えています。たとえば、電話とメッセージしかできないスマートウォッチや、GPS機能付きのスマートウォッチを検討しているそうです。
1人1台のスマホが当たり前の現代において、固定電話は一見すると時代遅れな選択肢に見えるかもしれません。しかし、この事例は、固定電話が子どもたちの成長と、親子の関係、そしてコミュニティにおける新しいつながりの可能性を秘めていることを教えてくれます。
日本の保護者の皆さんも、この「レトロなバブル」を参考に、お子さんのデジタルデバイスとの付き合い方について、一度立ち止まって考えてみませんか?
スマホを「禁止」するだけでなく、「代替手段」を提供することで、子どもたちがより豊かで健全なコミュニケーション能力を育むきっかけになるかもしれません。ぜひ、ご近所の友人やほかの保護者の方々と、このテーマについて話し合ってみることから始めてみましょう。
スマホを「禁止」するだけでなく、「代替手段」を提供することで、子どもたちがより豊かで健全なコミュニケーション能力を育むきっかけになるかもしれません。ぜひ、ご近所の友人やほかの保護者の方々と、このテーマについて話し合ってみることから始めてみましょう。
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