子どもたちの可能性を解き放て!アメリカの事例に学ぶ「自由遊び」が学校を変える力

近頃、子どもたちの間に「なんだか生きづらそう」「友達とうまくやれていない気がする」「ちょっとしたことですぐに心が折れてしまう」…そんな雰囲気を感じていらっしゃる先生方や保護者の方はいませんか?
これは、アメリカでも共通の課題として認識されているようです。
サウスカロライナ州の小学校で先生をしているケビン・スタインハート先生は、最近の子どもたちが
脆くて、忍耐力や他者と協力する能力に欠けていることに気づき、何か解決策はないかと模索されたそうです
そんな中、この先生が注目したのが、「自由遊び」の持つ力でした。

アメリカ・セントラル・アカデミー・オブ・アーツ小学校での挑戦

ケビン先生は、自由遊びの効果に関する会議に参加したことをきっかけに、自分の学校にも自由遊びを積極的に取り入れることにしました
実際に実施した取り組みは以下の3つです
  1. お昼の休み時間をより長く、そして大人の介入を少なくした
  2. 始業30分前に校庭を開放し、自由に遊ぶ時間を作った
  3. 「Play Club」をつくった
この「Play Club」というのがユニークです。
週に1回、放課後(例えば午後2時半から4時半など)に学校を開放し、
異年齢の子どもたちが自由に遊ぶ時間を提供するというものです。子どもたちは、ボールやチョーク、縄跳びといった「ルーズパーツ」(決まった遊び方をしない道具)を使って、主に校庭や体育館で遊ぶことができます。図工室などを使ったりすることもあるそうです
特筆すべきは、その自主性の高さです。子どもたちは携帯電話の使用を禁止され、大人の介入がほぼない状態で自分たちで遊びを創り出します
そのクラブでのルールはたった2つ。「故意に誰かを傷つけてはいけない」「担当の大人に伝えずにその場を離れてはいけない」これだけです
。大人が遊びを主導することはなく、揉め事が起きた場合も解決したりはせず、大人が介入するのは緊急の場合のみです

驚くべき変化!問題の激減と出席率の改善

この取り組みを始めて最初の学期から、ケビン先生は子どもたちに劇的な変化が見られることに気づきました
子どもたちは、より明るく楽しそうに過ごすようになり、周りにより親切になったそうです
ほかにも、問題行動が減ったことや、子どもたちが以前よりも多くの友達をつくり始めたこと、そして「自分の日常や人生全般をよりコントロールできていると感じるようになった」と応える子どもたちも増えたことなどの変化もあったそうです。中には、いじめ行動や頻繁に校長室などへ呼び出しがあった子どもが、いじめ行動もなくなり、呼び出しもゼロになるといった劇的な変化を見せた例もあったと言います
数値にもはっきりと効果が現れました。前年と比べ、以下の点に大幅な改善が見られたと言います
  • 無断欠席の件数:合計54件から30件に減少
  • スクールバスの規則違反の件数:85件から31件に減少
  • 呼び出しの件数:年間約225件あったのが、約45件にまで激減
ケビン先生は、これらの変化はPlay Clubを導入したおかげだと確信しています。なぜなら、構造化されていない自由遊びこそが、「友達をつくる」、「感情をコントロールする」、「共感力や対人スキルを身につける」といった、子どもたちが成長するうえでは不可避な多くの課題に正面から取り組むことを可能にし、学校というコミュニティで健全な居場所を見つける後押しとなることで子どもたちを大きくエンパワーするからだとケビン先生は言います。そして同時に、創造性、革新性、批判的思考、協調性、コミュニケーション能力、自己管理能力、忍耐力、社会性といった、人生で最も重要なスキルを学ぶ機会になっているのだと強調しています
これらの効果があまりにも大きいと感じたケビン先生は、次の学期にはPlay Clubを週2回に増やしたほどです。ほかの教師たち自身もその変化の大きさを実感し、13人の先生がボランティアでPlay Clubの監督役を務めるようになりました。校長先生と教頭先生も同様にボランティアとして参加しているそうです

日本の小学校でも「遊びクラブ」を!

ここで紹介したアメリカの小学校の事例は、日本の子どもたちが抱える課題に対しても、大きな示唆を与えてくれます。詰め込み型の学習や、管理されすぎた時間の中で、子どもたちは遊びを通じて学ぶという、本来持っている力を発揮する機会を失いつつあるのではないでしょうか。
遊びは単なる息抜きではありません。子どもたちが自ら考え、試し、失敗し、友達と協力したり時にはぶつかり合ったりしながら、社会性や非認知能力を育むための、最も自然で効果的な学びの場です
セントラル・アカデミー・オブ・アーツ小学校の事例が示すように、学校に意図的に「自由遊び」の時間を確保し、特に放課後の時間を使って「遊びクラブ」のような場を設けることは、子どもたちの幸福度や対人関係を向上させ、結果として問題とされる行動の減少や学校生活への前向きな姿勢につながる可能性を秘めています
もちろん、導入には安全面の配慮や教員の負担といった課題もあるかもしれません。しかし、子どもたちの健やかな成長と、より良い学校環境の実現という「極めて大きなメリット」を考えれば、日本でも特に小学校において、このような自由遊びの導入を積極的に検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。
子どもたちの持つ無限の可能性を、自由な遊びを通じて解き放つために。日本の小学校にも「遊びクラブ」が広がることを願っています。
【参考文献】
The Anxious Generation: How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness (English Edition)

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