「主体的・対話的・深い学び」の視点から学校では「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」も重視して授業を改善します。
文部科学省 2020年学習指導要領広報
2020年学習指導要領では、子ども一人ひとりの特性や学習進度に応じて、指導方法や学習時間などを設定するなどの「指導の個別化」が必要であると示されています。
しかし、2023年の今も「この単元は○時間」という目安に沿って一斉授業で進めている学校はたくさんあります。
その授業のペースに合わない子どもは、理解が追いつかないまま授業が進んでしまうので、授業時間が苦痛になったり、または早く課題が終わってしまい待つ時間が多くなったり・・
そのため、授業の時間に理解が追いつかない子どもには、宿題を出したり放課後の補習などに取り組ませている学校も多いのではないかと思います。
休み時間や放課後の自由な時間が奪われるデメリットよりも、学習を遅れたままにしちゃいけないという義務感の方が強いので、おそらく「良かれ」と思って半ば強制的に補習に取り組ませているのではないでしょうか。
そもそも、1人ひとりに合わせた学びができたらどんなにいいだろうと思いますが、今の人員体制(35名に1人の先生)では不可能と考えるのが自然です。
・・・
でも!
あるんです!!
「自由進度学習」という、子どもたちが教科書やプリントなどの教材を使い、自分のペースで学びを進めていく方法を取り入れている公立の学校が!
広島県にある廿日市立宮園小学校は、2020年度から一部の授業に「自由進度学習」を取り入れています。
取り組みを始めてみると、子どもたちの学びに向かう姿勢に変化があったばかりか、全体的な学力も向上したといいます。
「自由進度学習」の具体的な進め方
ここでは、主に宮園小学校での取り組みについて紹介していきますね。
子どもたちには学習計画表が配られますが、その順序や使う教材、どのレベルまでチャレンジするかなどは子ども自身で決めていきます。
プリントやタブレット、ドリルで自由に進めながら、分からないところが出てきたら友達や先生に質問をします。学習内容がきちんと定着しているかはチェックテストで確認。チェックテストをやるタイミングも子どもに委ねられています。
分からない問題に何回もトライしたり、発展問題にチャレンジしたり、置いていかれる焦りや待ち時間のイライラを感じることなく各々のペースで学習できる環境があります。
教室はどんな様子かというと、三人で集まって相談していたり、先生のところまで行って質問したり、一人一人が自分のやるべきことを理解しつつ「個別化」と「協同化」が融合された空間になっています。
自由進度学習の効果がすごい!
自由進度学習では、学びを「自分で選択できる」「自分で決められる」ので子どもたちの意欲が高まることが分かりました。これまで「やらされ感」の強かった学習の主導権が子どもたち自身に渡されることで、生き生きと取り組むようになったとのことです。
また、普段の授業では理解に時間がかかる子が、自由進度学習に切り替えたことで一斉授業より早く単元を終わることができたという事例も。実践に取り組んでいる先生からは、一斉授業の5〜7割のスピードで学びを習得できるという報告があるそうです。
さらに、一斉授業のあとで行ったテストの点数と自由進度学習のあとのテストの点数を比較すると、平均点が2倍になったという驚きの結果も出ていました。
このように、学習内容を変えずに授業の方法を変えただけでも、学習意欲が高まり、結果的に目に見える「学力」も向上したというのですから、公立学校でもどんどん取り組んでいってほしいと思います。
自由進度学習からPBLへ
自由進度学習が可能になると、単元や学年の縛りもゆるやかに無くしていけるのではないかと思います。
PBL(Project-Based-Learning)と呼ばれるプロジェクト学習や課題解決学習に取り組む公立学校も増えてきていると思いますが、まだまだ「総合的な学習」の扱いで時間数は少ない印象です。
宮園小学校では複数の教科を自由進度学習で進める実践も行われていました。
ということは、教科の枠組みを取っ払ってしまいプロジェクトベースで学習を進めていくことも十分可能になり、子どもたちは思考の流れに沿って学びを進めたり、体験活動を通して学習内容を習得することができます。
宮園小学校で行っている自由進度学習でも、個別で進めるドリル的な学習だけでなく、実物や体験を通した学習を大切にしています。
「早い・遅い」「できる・できない」という不必要なレッテルを貼ることなく、それぞれのペースを尊重するためにも、異学年で教え合い・学び合いができる環境にも発展していけるといいなと思います。
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